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家の時間 連載 VOL10

2009年04月01日更新

日本的「壁」のあり方 アートを飾る


あるボヤキから「壁」について考えるようになりました。

アート業界では、作家も業者もつくづく
「日本人は家に絵画を飾らない」と日々ボヤイているのです。
この現状を嘆いて多くの画廊が海外マーケットに注力するようになり、
作家も活動の拠点を海外へ移したりします。

なぜ自宅の壁に絵画を飾らないのか?

自宅に絵がないからといって日本の人々が芸術に無関心なわけではありません。
展覧会を見たり、美術史を学んだり、作品集を購入したり、
MOMAやルーブルに立ち寄った経験のある人はごまんといるし、
歴史的にも優れた絵画や文学を残し、世界的な芸術家を輩出している。
むしろ多くの人が、文化を愛する教養人なのです。

私は人々の文化度云々などではなく「壁」への関心度に
その鍵があるように思えてなりません。
すでに多くの専門家の指摘がありますが、伝統的な日本家屋は襖で仕切られ、
壁のある部分は床の間や押入れ、水屋になっていたため
大きな壁面というのはあまりありませんでした。
装飾を施す対象は襖や欄間や床の間だったのですね。

普段、壁なんて意識しますか?
あたりまえにそこにあって、家を支えて間を仕切る以外には機能もなく、
そこになにかしようとは、あまり思わないのではないでしょうか?
しかし、壁が変わるとインテリアの印象は大きく変わります。
面積が大きいので、暮らす人に与える影響は大きいのです。

色を変えれば気分が変わるし、
ビニールクロスを漆喰に変えるなら、空気が違って感じられます。
照明の当て方を凝ってみたら、夜の時間のすごし方が変わるでしょう。
我が家では子供の絵を額に入れて飾る、という役割を壁にもたせていますが、
「創作」に対する子供の関心が歴然と違ってきました。

「壁文化」が育つとインテリア文化が育つ、なーんていったら大げさですが、
家具や小物のアレンジよりも、ドラマティックな変化が生まれるでしょう。
かつての日本の家が襖や欄間の装飾でその家のアイデンティティを表現したように、
ご家族の時間をより充足させる、個性的な使い方をしてみてはいかがでしょうか。

写真キャプション
(上)塗りの壁は光が当たるとムラが見えて美しいですね。素材そのものの美しさを眺めているだけで、アートも何もなくていいかも(?)などと思ってしまいます。

(中)引き目の残った壁なので、負けない素材感のあるアートを、額なしで飾っています。ここの壁が白のビニールクロスだったら、やはりもっと味気ないものになったのだと思います。

(下)濃い紫の壁です。家具のシルエットが際立ち、照明の反射も素敵ですね。

('09 09/09)