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closetの引き出し -6段目- 

 こんにちは。closetスタッフの荻野です。
 前回は石の建物について書きましたが、今回は、パナソニック汐留ミュージアムで開催されている「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展を観てきたので、「ガラスの家」について書こうかと思います。知識不足を補うために、この展覧会の関連企画として開催されていた日仏美術学会後援のオリヴィエ・サンカルブル氏(ポンピドゥー・センターパリ国立近代美術館)による講演会も拝聴してきましたので、展覧会の説明に書いていないことを中心に書ければいいなと思います。

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 ピエール・シャローは1883年生まれのフランスの家具デザイナー・インテリアデザイナーであり、後にパリの「ガラスの家(Maison de Verre)」(1932年)を設計したことで知られています。
 この建物は、サンジェルマン・デ・プレ教会などがあるパリ七区に現在も建っていて、申し込みをするなどしない限り、簡単には観ることはできません。1972年、産婦人科医師のダルザス博士とその妻は、この街区の一画の建物を取得し、ピエール・シャローに診療所付きの住宅の設計を依頼しました。当初、施主とデザイナーは、館をすべて壊して新たに住宅を建てる計画を立てていましたが、この建物の3階を借りていた老婦人が、立ち退きを拒否したため、既存建物の3階とその上の屋根裏部分をそのまま残して、その下の二層分に新しい三層の住宅を置き換えるように新築するという方法が採用されています。その結果、既存部分を支えるための鉄骨柱が、ガラスの家の内部に強い存在感を示すことになりました。

 ガラスブロックを全面に用いたファサードが、この家の名の由縁ですが、このブロックによって「ガラスの家」は、昼間は外の光を通して内部を明るく照らし、夜は内部の光によって外の闇の中で明るく浮かび上がります。二川由夫氏は世界現代住宅全集の中で「それが意匠的/技術的な効果・現象を超えた新しい光と空間の新しいロジック/哲学の可能性を生み出していることは、その後の近代建築史に大きな影響を残すことになる」と書いています。また続けて二川氏は、その光の性質について、「日本の障子の光に似た穏やかなものであり、ジャポニスム的な美学はここに現れている」と述べています。私には真偽の程は判断できませんが、障子を連想することは面白い解釈であると思いますし、「ガラスの家」を身近に感じることができます。

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 内部にはシャローがデザインした様々な家具が置かれています。いわばシャローの本業ともいうべき、これらの家具は、ガラスの家の内部空間において、見たことのないような不思議な調和を生んでいるように感じます。あまり文献を見つけることができなかったのですが、内部に飾られたアートも気になるところです。施主のダルザス夫妻は芸術家との交流も幅広く、ジャック・リプシッツ(Jacques Lipchitz)のレリーフ、ジャン・リュルサ(Jean Lurçat) のタピスリーなど、当時のアーティストたちの作品が内部を華やかに彩っています。

 シャローに話を戻しましょう。一見しただけではわかりませんが、ファサードのガラスブロックもキャビネットに用いられているジュラルミンも当時としては新しい素材であり、シャローはこれらの素材を積極的に採り入れていました。私は、シャローのデザインした「修道女」という名前の照明が好きなので、最後にそれを紹介して今回の「ひきだし」を終わりにしようかと思いますが、その照明にも当時としては新しい素材が使われています(ちなみに「修道女」という名前の由来ははっきりわかってはいないそうです)。4点現存している、このフロアランプの傘の部分には、アラバスタという素材が使われています。シャローは、長年共に仕事をした金属加工の職人ルイ・ダルベに、アラバスタを切ることができる機械を特別に購入してくれるよう頼んで、やっとこうしたランプの傘を作ることができるようになったそうです。アラバスタで作られた傘の部分から漏れる光が上品で、造形的にも非常に美しい一品だと思います。このランプについても、汐留ミュージアムの展覧会で出品されていましたので、機会があればぜひご覧になっていただきたいと思います。

<参考文献>
世界現代住宅全集13 ピエール・シャロー ガラスの家(ダルザス邸)
2012年7月25日発行 文:二川由夫 企画・編集・撮影:二川幸夫
制作・発行 エーディーエー・エディタ・トーキョー

※画像はパナソニック汐留ミュージアムのチラシよりお借りしました。
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「建築家ピエール・シャローとガラスの家」展
パナソニック汐留ミュージアム
開館期間 2014年7月26日(土)~2014年10月13日(月・祝)
開館時間 午前10時より午後6時まで(ご入館は午後5時30分まで)
休館日 毎週水曜日、夏期休館8月11日(月)~15日(金)
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過去の記事はこちらから
closetの引き出し 5段目

(ogino)

('14 08/22)