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closetの引き出し -8段目-

 こんにちは、現代アート勉強中、だけど中世美術も好きなスタッフの荻野です。

 前回は、タペストリーから始まり西洋中世の彩飾写本まで、ガッツリ美術の話を書かせていただきました。
 今回は、ちょっと軽めに。いわばメインディッシュの後のデザートみたいな感じで、クリスマスやお酒の話をしたいと思います。

 さて、日本でもクリスマスの飾り付け一色の季節になりましたが、この時期ヨーロッパでは各地でクリスマスマーケットが開かれています。そんな中でも有名なマーケットの一つが、フランス・アルザス地方にあるストラスブールという都市のマルシェ・ド・ノエル(フランス語でクリスマスマーケットのこと)です。

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 ストラスブールは、今ではフランスの都市ですが、ドイツとの国境近くにあり、17世紀以降、ドイツとフランスの間で領有権争いが繰り返された土地でした。そのため、食文化や言語などにもドイツの影響が色濃く見られます。
 ストラスブールで印象的なのが、伝統的な木組みの家々が並ぶ、その町並みです。幼い頃にメルヘン童話の絵本か何かで見たような街並みに、女子なら「キャ~可愛い!」と声を上げてしまうこと間違いなし(笑)!

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 美術的には、以前少し触れたストラスブール大聖堂の他に、近現代の名画が数多く収蔵されたストラスブール美術館もあります。また、ストラスブールまで来たら、コルマールにも足を伸ばして欲しいですね。ストラスブールから南に70キロほど行ったコルマールのウンターリンデン美術館には、有名なキリストの磔刑図「イーゼンハイムの祭壇画」ほか、中世末期からルネサンス期の絵画や彫刻の見事なコレクションが収蔵されています(2015年4月まで拡張工事中とのこと)。

 下が、イーゼンハイムの祭壇画、です。ばばーん!
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…あわわ、またA5ランク特製サーロイン級のメインディッシュが登場してしまったので、話を戻しましょう。マルシェ・ド・ノエルまで戻しましょう。


 マルシェ・ド・ノエルといえば、ヴァン・ショーという、温めたワインを売っている屋台を見かけることが、よくありました(ちなみに、恥ずかしながら今まで知りませんでしたが、「ホットワイン」は和製英語なんだそうです)。一般的なヴァン・ショーはシナモンなどのスパイスが加えられている赤ワインで、屋台では、湯気の上がっている大きなお鍋から、お店の人がおたまじゃくしで紙コップにじゃばじゃば注いで渡してくれます。
 日本の甘酒みたいな感じ。といつも私は思って、ついつい飲みすぎてフラフラになってしまいます。…下戸に限りなく近い体質なもので。


 そんなことはともかく、ヨーロッパでは古代から親しまれてきたワイン。中世の時代には、ワインは水割りで飲まれたり、様々な香草やスパイス、はちみつなどを加えて飲まれたりすることが多かったそうです。ヴァン・ショーは実は伝統的な味なのかもしれませんね。
 そしてまた、やっぱり中世の話になってしまうのですが、ワインは修道院などの大切な収入源として作られてきました。日本でも有名なボジョレーヌーボーが作られるブルゴーニュ地方にはクリュニー修道院とシトー修道院という、キリスト教の歴史においては重要な二つの修道院があり、ワインを生産してきました。

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(クリュニーの修道院)

 修道院で作られたお酒というのは他にもあって、フランスの南東部ローヌ・アルプ地方にあるシャルトルーズの修道院ではシャルトルーズという薬草系のリキュールが作られてきました。この修道院の様子を紹介したドキュメンタリー映画が日本でも公開されて、話題になっているようです。このリキュールは秘伝のレシピを元に、沢山の薬草を調合して作られているそうで、ハーブが凝縮されたようなスッキリした飲み口です。…と「ニアリーイコール下戸」の私が言っていますが、アルコール度数は何と55度!危険です。それから薬草系ということで独特の癖がある味でもあるので、チンザノ系が嫌いな方にはおすすめできませんので悪しからず。

 薬草系の味といえば、私が個人的にフランスから連想するものの一つに、アニスのキャンディがあります。アニスもまた、中世の修道院で薬として用いられていたそうです(…くどいけど貫きます・笑)。いわば薄荷のキャンディみたいな感じで、スッキリするのが好きで、フランスに留学していたときにはスーパーで入手して常用していたのですが(変な薬ではありませんよ)、日本ではそんなに一般的には見かけないため、食べなくなってしまいました。

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 アニスのキャンディといえば。
 アメリカのカニグズバーグの『ジョコンダ夫人の肖像』という児童文学の中に出てくる、サライという少年の大好物がアニスのお菓子なんです。正確にはキャンディではないみたいなんですけどね。
ジョコンダ夫人はもちろん、モナリザのこと。この物語は、レオナルド・ダ・ヴィンチがモナリザを描いたときのお話です。私自身はこの時代のお菓子事情についてちゃんと調べたりしていないですが、きっと14~15世紀のイタリアでもアニスのお菓子が食べられていたという史実が残っているんでしょう。とすれば、サライだけではなくて、ダ・ヴィンチやモナリザも、食べたことがあったでしょう。

 
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 アニスは消化促進作用があり、古代ローマ時代には宴会やごちそうを食べた後に、アニスの入ったお菓子を食べる習慣があったとか。
 特にこれからの季節、胃腸によさそうなアニスのお菓子を探してみても、いいかもしれませんね。


('14 12/01)