ご納品後記:グレーや黒など、ダークな壁にアート

コーディネーターさんとお話ししていて、
壁に何かアートを飾りたいとお客様がおっしゃるきっかけの一つとして、
「壁の色をダークにしたから」というのがありました。
一般的な白いクロス壁ではなくて、
グレーや黒などの壁紙にされる方は増えているなという実感はあります。
白い壁なら何もなくてもOKなのにグレーになったら飾りたくなる?
つまるところ、壁の色までこだわって選ばれる方は、
床に置くものだけでなく、壁材や壁に飾るものも含めて、
より立体的にインテリアを考えている。ということなのでしょう。

ただ、グレーや黒の壁にアートが飾ってあると、
確かに、ぱっと見で、直感的にかっこいい!と思います。
というわけで、そうした事例をご紹介します。

 

モダンなインテリアに合わせた韓美華のアート

韓美華 Seed 910x727mm パネルに綿布、アクリル、油性色鉛筆

 

最初にお見せしますのは、マンションのモデルルームです。
全体にグレイッシュなトーンの壁に無垢材の床、厚手のふっくらしたドレープ、
濃いこげ茶のチェアやコンソールで引き締めているインテリアです。
その中にあって、アートの白がとても効いています。
作品は韓美華によるもので、パネルに綿布を貼ってアクリル絵の具などで描かれています。
韓美華の作品は、白のベースに力強いストロークの黒があることが多いです。
一見、一気呵成に描き上げたダイナミズムを感じながらも、
細部にやさしく漂うようなニュアンスが添えられ、
静かな物語が展開しているように鑑賞できます。

 

モダンなインテリアに合わせた松橋孝のアート

松橋孝 undercurrent 151 1300x1300mm 麻布、岩絵の具、金箔

 

次の事例は戸建てのモデルハウスです。
壁は、ほぼ黒に近いとても暗い色にされていて、ドラマチックな空間ですが、
一般のお宅ではなかなかここまでの色を使う勇気は出ないでしょうから、希少な事例ですね。
床と天井を明るい木材として、大きな開口部があり、さながら“陰影礼賛”のモダン版。
ご納品しましたのは松橋孝さんの作品です。
この空間にあわせて注文で作家さんに制作していただきました。
松橋さんは東京藝術大学日本画科のご出身で、
作品にも岩絵の具や砂子、箔などを使います。

 

松橋孝の作品一部アップ

 

アップにしないと分かりませんが、顔料がキラキラ反射して、
こうしたハイエンド向けのインテリア空間にも、重厚な存在感を発揮します。

 

ダークな壁に合わせた増田沙織のおしゃれなアート

増田沙織 untitled 803x1167mm パネルに岩絵具,墨,水干,真鍮粉,雫石,錫粉,雲母,胡粉,膠

 

次の事例も同じモデルハウスで、かなり濃い色の壁です。
増田沙織さんの作品で、こちらもこの空間にあわせて制作していただいたものです。
遠くからも目を引く、すっきりとした白と、大きなうねり。
さほど大きい作品ではありませんが、存在感があります。

 

モダンな玄関に飾った田村正樹のアート

田村正樹 SORA パネルに和紙・胡粉・アクリルなど φ900mm

 

最後にもう一枚、こちらは個人のお宅の玄関です。
田村正樹さんの円形のパネルに描いた絵画です。
何度も和紙を重ね、胡粉やアクリル絵の具なども重ねていきながら制作します。
硬質な石の床、カウンターの中にあって、手触りの優しそうな(触らないほうが良いですが・・)和紙の質感が、
素材のレイヤーとして複層的な味わいをプラスしています。
こうしてみますと確かに「これらの作品を、もし外したら?」と想像すると、
とても殺風景な空間になってしまうのかもしれません。
ダークな壁は、作品の色味を慎重に選んでいけば、とても効果的なアートの舞台になるようです。

 

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